「ハロウィンねぇ……レミィの思いつきに
付き合うのは構わないけど、私は外に出ないわよ。
 別にお菓子とかいらないし。
図書館でゆっくりしていたいわ」   「それなら、逆に来訪者を  悪戯でおもてなしするのはどうですか?」
それよ、とパチュリーは小さく頷く。   「幻想郷中が珍しい祭りに浮かれるのに乗じて、
泥棒猫が忍び込まないとも限らないしね」  
なにしろ図書館は、常日頃から窃盗被害に遭っている。 火事場泥棒ならぬ祭泥棒に狙われることは十分に考えられる。   「そうと決まれば罠を準備しましょう。
どんなのがいいかしらね」
「それでは、魔理沙さんが目をつけそうな本に 魔法を仕掛けておくのはどうですか?」  
それはいいわね、と七曜の魔法を操る魔法使いは微笑する。 『動かない大図書館』の名を冠する彼女からすれば、本にトラップを仕込むくらいは容易たやすいもの。 見事な手際で、手癖の悪い来客のための魔法を練り上げていく。  
「トリック・オア・トリートっていうより、 デッド・オア・アライブって感じですね」
「今日の私は邪悪な魔女だもの。  おいたトリックをする悪い子には、
おもてなしトリートで応えないとね」  
あるいは彼女も、祭の空気にあてられて気分が高揚しているのかもしれない。 ハロウィンの夜に笑うのは、果たして白黒の魔女か、七曜の魔女か――。