フランドール・スカーレット――
――強大な力を持つ彼女だが、その内面は見た目相応に幼い。  
「お菓子をくれなきゃ、いたずらしちゃうぞ~♪
咲夜、お菓子ちょ~だいっ」  
ハロウィンの衣装に身を包んだ少女は、あどけない表情で二択を迫る。  
「用意してございますよ。どうぞ、妹様」
「やった! 魔理沙、次はどこに行く?
パチュリーのとこ? それとも、お姉様?」  
「それもいいけどな、フラン。 外に出るってのはどうだ?」
「えっ? でも……」   不安そうに、けれどワクワクを隠せない様子で、咲夜の様子を窺うフランドール。  
「今日なら構わないでしょう。  妹様をよろしくお願いね、魔理沙」  
紅魔館をあとにした魔女と悪魔は、バスケットを手に夜を舞う。
「人間の里っていうのがあるんでしょ?
行ってもいい?」   「それは……いや待てよ、  今日なら仮装だと思われるか。いいぜ、行こうか」  
快哉の声を上げるフランドール。その赤い瞳は、期待に満ちている。 唇から覗く鋭い牙も、悪魔の翼も、この夜ばかりは隠す必要がない。 一夜限りの、人と妖魔が混ざりあう祝祭―― ――それは、いつにもまして幻想郷らしい光景なのかもしれない。