「魔理沙っ、人間の里がぼわ~って光ってるよ。
あれな~に?」  
眼下に広がるのは、おぼろげな光に照らされ、どこか幽世かくりよめいた人間の里。  
「ジャック・オー・ランタンって言ってな。  かぼちゃをくりぬいて、  中に蝋燭を入れるんだとさ」
「あははっ、変なの!
でも、地面にも星があるみたいできれいだね!」  
普段は月明かりが頼りの幻想郷の夜も、少女の目には煌びやかな宝石箱のように映る。   「トリック・オア・トリ~~~ト!
おかしをくれなきゃ、いたずらしちゃうぞ~♪」
里の住民は見ない顔に首をかしげながらも、無邪気な少女に警戒心は抱かない。   「魔理沙、こんなにいっぱいもらっちゃったよ!」   里の人間の誰一人として気付かない。 目の前のあどけない少女が、この里など容易たやすく壊滅させることができる力を持つことなど。 無邪気な怪物が、善良な人間からお菓子をもらうという奇妙な光景…… それもまた、幻想郷の在り方か。   「ハロウィンって楽しいね!
よ~し、次は霊夢のとこに行こうよ!」
「神社の巫女がハロウィンか……くくっ、  フランを連れていったら、どんな顔するかな」   とっておきのいたずらトリックを思いついたとばかりに、魔理沙がニシシと笑う。  
「あははっ!
毎日がハロウィンだったらいいのにね!」  
夜にしか生きられない吸血鬼の少女は、夜空に輝く太陽のように笑うのだった。