「私は損をするのが嫌。だから、
自分のためなら姉さんたちだって利用するよ」  
キーボード及びパーカッション担当のリリカ・プリズムリバーは、
ニッコリと、笑顔と共に言い放つ。
「一人演奏なんてもうやらないやらない、  そもそも私は、ルナサ姉さんみたいに
一人で弾くのが好き、ってわけじゃないし。
 だって手間がかかる割に、
お客さん全然来てくれないじゃない」  
三姉妹の末っ子は計算高い。 相手の態度や行動を三手先まで計算し、どんな状態からでも自分に有利に場を進めていく。 そんなリリカだからこそ、楽団にとって彼女はなくてはならない存在となっている。
「私の音色は姉さんたちの躁鬱に溢れた音色を
耳あたりの良いものに変えるの。
 つまりね? 私が楽団にいなかったら、
ライブ会場は躁鬱入り乱れの
地獄絵図になってしまう」  
彼女の持つ【幻想の音を演奏する程度の能力】は、外の世界で無くなった音を操るというもの。 姉たちのように、聴いている者の精神に作用するわけではない、普通の音。 しかしそんな姉たち二人の音色と合わさることで、躁鬱の効果を抑制し、 人が普通に聞けるものへと変容させることができるのだ。
「私の演奏自体に不思議な力があるわけじゃない、
精神に強く響くわけじゃない。
 でも、普通に演奏しているだけで
楽団のためになるんだから、
 それはとても素晴らしい演奏だと
……自分でも、そう思うわ」