竹林の奥深く、時と空間の果て、隠遁の永遠亭にもチラシが来ることがある。 主にそれは、限られた行き来する者たちの気まぐれでもたらされるものではあるが。   「幻想郷で一番の頭脳を決める将棋大会
『幻想昇竜戦』への挑戦者を求む、ねぇ」  
永琳は山の鴉天狗が考えたであろう煽り文を見て、 「永琳なら優勝できるわ」と言いそうな姫を思い浮かべた。 果たして、永琳の考え通りに鴉天狗が主催であったし、姫様は「優勝してきてね」とも言った。
「姫様が難題をお出しになったのだから、
優勝を用意するのはいいのだけど」  
永琳は自らの頭脳が秀でているのを知っているが、しかし幻想郷には賢者が多く存在する。 その中の誰が大会に出てくるのか、そして誰なら『出ないように出来る』のかまで考えを巡らせる。 大会までなにも起きないわけがない。そこら中で盤上試合がもう始まっているだろう。 最悪、スキマ妖怪が大会に出場しているか、裏でなにかを企んでいる可能性がある。
危険なのは賢者だけではない、『一番』という言葉は多くの妖怪のプライドを刺激する。 将棋なんて知らない妖怪でも参加を考え、なんであれば自らの優勝を疑ってないだろう。 参加者全員を始末すれば大会の優勝者は自分になるという戦略は簡単で効果的だ。 あるいは……主催の鴉天狗が参加者と内通しているか、主催自身が出る可能性もある。 将棋は天狗の好むところだ、天狗大将棋という特殊ルールを導入しているのも見逃せない。   「一番の頭脳だなんて、将棋の盤上で測るには
面倒な難題だこと……」  
あらゆる可能性を考え、検討し、永琳は座して将棋大会まで待つことにした。