神子が作り上げた神霊廟は、幻想郷のあらゆる場所に入り口を繋げることが出来る。 山の紅葉風景いろどりを楽しもうと、神子は神霊廟の上空に妖怪の山を繋げてみることにした。  
「神霊廟ごと妖怪の山に繋げてしまうなんて……  直接歩いていけばいいではないですか」  
「まあそう言うな屠自古。
この道場もたまには彩りが必要とは思わないか?」
呆れる屠自古を尻目に、神子は綺麗に赤く染まった妖怪の山を見る。 幻想郷でしか見ることが出来ないであろう雄大な紅のパノラマであった。 これほど素晴らしいものを見せられれば、さすがの屠自古も言葉を失うしかない。    
「この道場は自然の風致にやや乏しいからな。  たまには、こういうのもいい」
やがて風が吹き、外から道場に紅葉の葉が舞い込んでくる。 神子はそれをつまみ上げまじまじと眺める。  
「美しいですね太子様。  思わず溜息が零れてしまいそうです」
「そうだな。この景観が見れるなら、
幻想郷に復活した意味もあったというものだ」   「戯れ事を、太子様」 二人はしばらく、神霊廟の空に浮かぶ秋の絵画を眺めていた。
「木の葉が集まってあの景色を成している……
道場にも一本、楓を植えてみるのはどうだろう?」   「構いませんが、  掃除は誰がするのですか?  まさかとは思いますが私……?」
「さ、早く植えてしまおう。
私はさっそく準備を始めるとする」   「外に出るのは嫌がったのに、思い立ったら  すぐに動かれるのですね、まったく」  
意気揚々と道場に紅葉の木を植えようとする神子。屠自古は渋々それを手伝う羽目になるのだった。 まあ、こんな秋の一日があってもいいかもしれない。