万霊節の作法を本で知ったアリスとパチュリーは、家の前に篝火を焚いていた。 大きな魔法陣の真ん中でパチパチと音を立て燃え盛る炎を退屈そうな瞳で見下ろしつつ、 アリスは篝火の効果のほどを確かめるため、魔法の糸で何体かの人形を操作する。   「本に載っていた通りだと、
これが万霊節の習わしということみたいね。
確かに、溢れた魔力が手に入っている気がするけど
……そこまで大したことはないのかも」
「まぁ、あくまでも外の世界での話だから。 幻想郷でこの時期に火を焚いたとしても、  空腹に耐え切れなくなったあまり、  芋を焼こうとしているようにしか見えないわ……」  
魔法使いである二人に空腹という概念は存在しない。 しかし、魔法の森という空間、そして他の季節と比べて食欲がより刺激される秋という季節が、 二人の行いの焼き芋感をどうしようもなく底上げしてしまっている。
「この程度の魔力で揺らいだ境界を
何とかできるとは思えないわ。
 やっぱり外の世界の魔法は
大したことないのでしょうね。
境界についてもまた然り」
「そもそも火を焚いた程度でどうこうできる  境界の揺らぎなんて気にするだけ  無駄だと思うのだけれど。  せいぜいちょっと調子が  悪くなったりするぐらいでしょう?」  
わざわざ外で火まで焚いたのに大した効果を得られなかった二人の言葉は少しだけ辛辣なのだった。