「まったくもう……どうして私がわざわざ
こんなことをしなくちゃいけないのかしら……」   「たまには本職の巫女らしく、  人々のためにしっかり働きなさいな」  
ぼやく霊夢の肩を掴み、華扇は準備を進めていく。 天穂日命あめのほひのみことに向けて、豊穣感謝の祈願をして欲しいと里の人々にお願いされたのだ。
霊夢としては神社に寄付して貰えるのだから断る理由はないのだが、 何故わざわざ自分が踊らなくてはいけないのかだけが疑問であった。 豊穣感謝をしたいのならば、直接出向いて神様に感謝するか、山の神社に頼めばいいのに……。   「こういうのは私じゃなくて、
他の連中に頼めばいいと思わない?」   「そんなことばかり言っているから、  妖怪神社などと噂されてしまうのでしょう?」
里の人々から捧げられた供え物の前で霊夢は、渋々神降ろしの儀の準備を進めていく。 華扇は霊夢がサボらないようにしっかりと見張るつもりのようだ。 とはいえ、霊夢も立派な巫女。やるときはきっちりやる。   「ちょっと、
そんなに見張らなくてもちゃんとやるわよ。
 貰うもの貰ってるんだから。その分はやるわ」
「その精神が良くないと言っているのです。  寄付があろうとなかろうと、  人々の願いを聞き届けるのが巫女の本懐でしょう」  
華扇の気持ちを知ってか知らずか、霊夢は素知らぬ顔で神降ろしを始める。 彼女にとって、神降ろしをして祈願をするなどあくびが出るほど簡単でつまらない仕事だ。 しかし彼女は自分の役目をわかっているし、それを必ず全うする。