豊穣感謝の祈願として舞を舞う霊夢。 その姿は普段の彼女からはまったく想像ができないほど、優美だ。 空気を止めるその舞に、見届けていた里の人々も、華扇も、すっかり見惚れていた。   「さて、こんなもんかしら。
さ、博麗神社に寄付をお願いします。
しっかりやったんだから弾んでよね」  
舞が終わるとすっかりいつもの調子で寄付をせがむ霊夢の姿に、人混みのどこかから嘆息が漏れる。 それは彼女がサボらないよう傍で見張っていた華扇も同じだった。 せっかくいい雰囲気だったというのに、この巫女は。
「あなたは余韻という言葉を知らないのですか?」  
「そりゃあ知ってるわよ。
でもあいにく私だって暇じゃないの」   「いつも暇しているような気がしますが……?」  
呆れる華扇を尻目に、賽銭箱のような小さい箱を里の人々に突きつけていく霊夢。 里の人々は霊夢に感謝と呆れの気持ちを半々込めて次々金銭を投げ入れていく。 その様子を見ながら霊夢は「フフン」と何やら得意げに小さく笑っていた。
「はぁ……これでまた神社によからぬ  噂が流れてしまいますね。巫女が金をせびったと」  
「失礼な。さすがに人聞きが悪すぎるわよ。  私はしっかり働いてお金を貰っただけ。
文句はないでしょ」  
華扇の小言を受け流し、満足げに笑う霊夢は軽い足取りで帰路につく。 確かにやることはやったし、一応人々にも感謝されてはいたのだからそれでいいのかもしれないが。
「次はもうちょっと人々が気持ち良く  お金を払えるようにしてあげましょうね?」  
「えぇー? 今から次の話?  やめてよ、面倒なこと考えさせないで。
黙ってお賽銭を入れて欲しいわ」  
俗っぽい言葉で肩をすくめる霊夢。先程まで見事な踊りを見せた者と同一人物には見えなかった。