「おかしいわね。松茸がぜんぜん見当たらないわ」   輝夜は松茸を求め、きょろきょろと山の斜面を見る。 松茸狩。いつもならペットのうさぎにでも任せることではある。なんであれば止められたのだが。   「たまには自分で探すのも
風情があると思ったのだけれど……」  
今夜は満月、月の下で豊穣祭という名の秋のお祝いを開くつもりだ。 秋の味覚を集めるために輝夜以外にも、永遠亭のものたちは幻想郷を奔走している。
「でもおかしいわねえ。アカマツを
巡っても巡っても、なかなか集まらないわ……」  
松茸とは文字通り『マツ』に生える『きのこ』であり、輝夜が探す場所は間違いではない。 今までも松茸があったであろう痕はあった、あったがなくなっている、つまりはつまり……。  
「……ははは、どうも」  
「ああ、なるほど。そうよねえ」   藪から出てきた白狼天狗のが、松茸を籠にいれて背負っているのに輝夜はため息をついた。
「松茸狩ですよね。すみません。  ここらは採ってしまったのでありませんよ」  
「いいのよ。まだ心当たりはあるもの。
そう、この先の滝向こうに……」   「……言いにくいのですが、そこは先ほどもう…… ひっ、すみませんっ!」
天狗社会は縦社会。きっとこの天狗も上から命令されてやっているだけ。だから悪くない。   「やるじゃない。山の白狼天狗も……!」   哨戒天狗は土地勘に強い。自分は知識での勝負となるだろう。だが……負けるつもりはない。