「まだ食べるんですか!? 幽々子様」  
白玉楼に、妖夢の呆れた声が響く。所狭しと並んだごちそうは、すべて妖夢の手によるもの。 これから宴会かと誰もが思う光景だが、そのすべてはたった一人の主のために用意されたものだ。   「食欲の秋って言うじゃない?  サンマにマツタケでしょ、
栗にかぼちゃに秋茄子っ」
「秋ってどうして美味しいものが
こんなに多いのかしら。
 デザートには柿やビワなんかもいいわね~」  
「幽々子様は季節関係なく、よく食べるでしょう」  
秋の空にため息ひとつ。庭師にして剣術指南役が、彼女の本来の務めだ。 専属シェフのごとき現状には、ため息のひとつもでるというもの。
「季節の美味しいものを食べてこそ、
生きているって実感があるんじゃない」  
冗談の類か。千年間、亡霊をやっている幽々子の口から出た場合、判別が難しい。
「だから、ちゃんと秋を堪能しなきゃ、
季節にも食材にも失礼よね~。
というわけで、妖夢。お鍋はまだ?」  
「はいはい、ただいま用意しますよ。  ……まったく、半人半霊遣いが荒いんですから」
「ふふっ。だって、妖夢のお料理、
どれもこれも美味しいんですもの」   「褒めてもなにもでませんよ。  幽々子様の魂胆ぐらい、お見通しなんですから」  
調子のいい主人に対し、妖夢は口を尖らせる。 嬉しさのあまり緩んでしまいそうになっている頬を隠すように。