冥界に居を構える白玉楼。人間はもとより、妖怪であろうと近づける者は少ない。 しかし、幻想郷の賢者たる八雲紫にはそんなこと、お構いなしだ。  
「あら、お鍋じゃない」  
いつものように、虚空に開いた裂け目から、ひょっこり顔を出すスキマ妖怪。   「いらっしゃ~い、紫。一緒に食べていかない?」  
「ご相伴に預かろうかしら。 これはお酒が進みそうね」
突然の来客も、幽々子は驚くことなく歓迎する。 まるでここに来ることが分かっていたかのように。 旧友は得難いものだ。幽々子のような身の上では特に。  
「秋は過ごしやすくていいわね。  いっそ季節の境界をいじって、  ずっと秋のままにしようかしら」  
「それ、いいわね~。ずぅっと収穫の秋だから、
ずぅ~っと美味しいものが食べられるもの」
食欲の赴くままに、気軽に異変を起こそうとする幽々子と紫。 そんなことをしたらまた博麗の巫女に攻め入られる、と主をいさめる妖夢。   「妖夢はまじめね~。  それなら、この短い秋を楽しむために、
 宴会でもしましょうか」
「それなら、料理できる人も呼んでくださいね」  
巫女や魔女をはじめ、最近では知り合いも増えた。 変化の少ない冥界で、悠久の時を過ごす幽々子。 そんな主に友人が増えるのはいいことだと、妖夢は思うのだ。