「この時期、穣子は人間たちに呼ばれるの。
みんなに囲まれて、ちやほやされて……
少し羨ましい。
でも、秋は実りだけではないわ。
やがて訪れる終わりもある」  
秋の紅葉景色を司る秋静葉は、落ちる木の葉を始め、秋の儚さや脆さを司る存在だ。 しかし、彼女はその儚さを嘆いたりはしない。むしろ、誇りにさえ思っている。
「一生懸命塗った紅葉が、
冬が近づくにつれて散っていく……
寂しさと終焉の象徴とも言うべきその光景は、
私だけが生み出すことのできる
芸術作品と言っても過言じゃないわね」
丹精込めて黄色く、赤く、黄昏に染めた葉っぱが散っていくのは確かに悲しい。 しかし、そこにこそ秋の素晴らしさが凝縮されている。すぐ終わるからこそ、秋は美しい。   「どんなものも、生まれては栄え、
衰えて散っていく。
終焉は、新たなる再生の幕開けなの」   どんな季節にも終わりはある。特に秋はその中でも時期が短い。
「でも、短いからこそ秋は素晴らしい。
長ければ良い、というものでもないでしょう?
 私が塗った紅葉が輝くこの季節は、
まるで小さなアトリエのようなだわ」
「染まったばかりの初紅葉、
まだ緑の残り薄紅葉……そして、深い紅の冬紅葉。
 一瞬の輝きかもしれないけど、
どれも全て私の最高傑作よ」  
秋静葉は秋の終わりを嘆かない。秋の儚さを悲しむことすらしない。 儚いことこそが、彼女にとっての美しさなのだから。