「あー暇だ。暇だ退屈だやることが無い。
あまりにも平和が過ぎて反吐が出てしまいそうだ」  
ありとあらゆるトラブルが大好きな正邪は、どうやら心底つまらないらしい。 今の幻想郷は平和ボケしている。異変も少ないし、何よりみんなが仲良さそうに暮らしている。 それはそれは、とても良いことだ。……みんなに良いことは、正邪にとって全然良くない。 もっと、腹の底から笑えるような、愉快サイアクなことが起きてほしい――そう、思っていた矢先、   「あいつら、何を話してるんだ? なになに……
へえ、何やら変わったパーティを開くのか!」
確かに、最近どいつもこいつも忙しそうだなとは思っていた。 年末だからかと思っていたけれど、まさかそんな楽しそうなイベントの準備を進めていただなんて。   「これは私の手で面白くしてやるのがいいなあ。
うん、そうだ、そうしてやるべきだ。
面白いつまらないことに私を呼ばないなんて、
なんて正しいありえないヤツらなんだ!」
人の邪魔をするのに理由なんていらない。みんなの楽しみを台無しにするのに建前なんていらない。 そこに楽しそうで美味しそうで愉快そうなイベントがある。 たったそれだけで、正邪の行動は正邪の中で一瞬にして正当化されてしまうのだから。   「さあさあ、どうやって台無しにしてやろうか!
ああ、ああ、楽しみだ、凄く楽しみだ」
「今、私は最高に最低な気分と言ってもいい! 果報は寝て待てとは
まさにこのことなんだろうな!」  
正邪は幻想郷を駆け廻る。それはもう前のめりに、ご機嫌そうな全力疾走で。