月、地球、異界それぞれの地獄を司り、それぞれの世界に身体がひとつずつ同時に存在している女神。
他のどの存在よりも異質で、強力で、凶悪。本気を出した彼女には誰も逆らえない。
それでいて、どこか無邪気に見える存在。それこそが地獄の女神、
ヘカーティア・ラピスラズリである。
「ふうん……ピースは今日も幻想郷を
堪能しているようで何より、笑顔が眩しいわ~。
あんなに楽しそうなら、わざわざ地上に
住まわせた甲斐があったというもの」
住みにくい地獄よりも地上の方が幸せになれるからという理由で、ヘカーティアはクラウンピースに
幻想郷で暮らすように命令を下していた。 ……というのは、ほんの建前。
真の理由は、クラウンピースに幻想郷の自然や生命について学んでもらい、
私利私欲と弱肉強食に満ちた地獄に、苦痛溢れる新たな地獄を創り出すことである。
「とはいえ、面倒な秘神に目をつけられちゃって
あんまり大仰には動けないのだけれど。
ううーん、こうなったら私もピースみたいに
地上をエンジョイしちゃおうかしら?」
ヘカーティアは頭上にある三つの球をくるくると動かした。繋がった鎖がジャラジャラと音を立てる。
「そうだ。魔理沙に会いに行きましょう。
地上の女神になると彼女に宣言したのだし。
今後ともどうぞよろしくお願いしますと挨拶する
ついでにちょっとからかっちゃうわよん♪」
割とその場の勢いのまま行動するところは、配下のクラウンピースに少し似ているのかもしれない。