賑やかな会場の片隅、人気のない方で
パーティーの主催者であるはずのレミリアはふて腐れていた。
「ぶぅ~……」
グラスにストローを刺し、中の赤い液体をブクブクと泡立てている。
「お嬢様、そのような態度は
優雅ではありませんよ。あんまり」
分かりやすく不機嫌を振りまく主に、門番はどうしてご機嫌をとったものかと深いため息をついた。
「『サンタはどこにいるの? いないの?』
『吸血鬼がクリスマスを祝うんだってさ』」
「……さ、咲夜さん。後は任せました!」
レミリアがブツブツと会場でかけられた言葉を呟くと、美鈴はおびえて何処かに逃げて行った。
代わりにと主を押しつけられたのは咲夜だ、レミリアはギロリと瀟洒しょうしゃなメイド長を睨み付ける。
「フフフ、やっぱりこれ、なめられてるかしら?
そうよね? 二回目の紅い霧も辞さないわよ」
「……レミリアお嬢様。思うに、ですが」
「……何よ、あなたも
しょうがないとでも言うの?」
「お嬢様の主催したクリスマスパーティーを、
誰も彼もがみな等しく心より楽しんでおります。
このような会を開けるのは
お嬢様をおいて他におらず、
その力を当たり前としているからこそ……」
「当然なことをわざわざ口にしないと?
じゃあ口から出てくる文句はなんなのよ」
「それこそ、レミリアお嬢様ならば素晴らしい
答えが返ってくるのではという期待ではないかと」
ポンッとシャンパンの栓が抜かれる音とともにグラスが差し出され、ケーキが切り分けられた。
「どうかパーティーを楽しんでくださいませ。
お褒めいただいた通り、完璧に仕上げております」
「……ふふっ、なるほど。貴女の準備した
パーティーを台無しにするわけにはいかないもの」
吸血鬼は受け取った紅いグラスを飲んで、ケーキを口にすると顔をほころばせた。
「いつも思うけれど、
当然のように完璧なケーキね。
咲夜、また腕を上げたんじゃないかしら?」
「主に喜んでいただくことこそ、従者の喜びです。
更に当たり前と思われるよう、精進いたしますわ」