「さて、と……これから忙しくなるわね。気合いを
入れなくては。紅魔館の威信に関わるもの」  
ここ紅魔館では親交のある人々を集めた、クリスマスパーティーを開催することになっていた。 当然屋敷は大忙し。掃除はもちろん、衣装や出し物の準備、飾り付けなどやる事は山積だ。 メイド長である咲夜はもちろん誰よりも働き、気付けば辺りは真っ暗。完全な夜だった。   「紅魔館のメイドとして、お客様には
最高の一口を味わっていただかないと」
咲夜は疲れた体を休ませることなく、明日振る舞う料理の仕込みに手を付ける。 そして料理を手際よく終わらせると、最後にチョコレートケーキの作成に入り始めた。   「お嬢様たちの要望はチョコレートケーキね。
妹様はともかく、お嬢様は味にも見た目にも
とてもお厳しい。ちょっとやそっとじゃ
小言を言われてしまうでしょうね
……さて、どうしたものかしら?」
独り言を呟きつつも、決して手を休めることなく、主レミリアのことを考える咲夜。 どのような物なら喜ぶだろうかと、完成図を頭の中で思い浮かべ少しずつ修正していく。   「そうねえ……ここをこうして……。
仕上げにはあれを使いましょうか。
これならまあ、合格かしら」
そう呟いた彼女はチョコレートレーキを見事に仕上げ、焼き上げる。 このままでも相当素晴らしい出来映えであったが、レミリアを満足させるには至らないと考えたのか、 溶かしたチョコを手に取り、複雑なアートを作り上げていく。 時と空間を操れる人間さくやでなければ作れない芸術が、瞬く間に出来上がった。   「いい仕上がりね。これならお嬢様も
満足してくれることでしょう。……ふふ」