「こ、これは凍えてしまいますね。しかし
門番の仕事を離れる訳にもいきませんし……」  
幻想郷の冬は紅魔館にも容赦なく訪れていた、掻いても掻いても降り積もる雪、そして雪、雪。   「雪かきが馬鹿らしくなっちゃいます。これじゃ
紅魔館が白魔館になってもおかしくありませんよ」
「……そうならないようにするのが、貴方の仕事」   まるで最初からそこにいたかのように現れたメイド長は、門番の仕事を確認しにきたようだ。
「そうはいってもこの量ですよ、咲夜さん」  
「もうすぐパチュリー様が雪解けの魔法をお使いに なられるわ。それまでは頑張りなさい」
「それはそれは……ハックション! うーん、それまでに私が
永遠の眠りについてなければいいですが」   「居眠りは極刑です。……とはいえ、そうね。 確かに寒いわ。防寒具でも用意しましょうか」
咲夜は雪山と真っ赤な美鈴の顔を見て眉を少し上げ、早急に手配しましょうと何度もうなずいた。   「ひょっとして手編みのマフラーでも
編んでいただけたり? ……なんちゃって」   「マフラー程度でいいの? なら、すぐ用意するけど」  
「え」
「もしかして、私に編み物が出来ないとでも?」  
「いやいや、まさかそんな!」   冗談を真にとられ美鈴は慌て始めた。忙しい咲夜にそんなことまでさせるのは申し訳ない、と。  
「たいした手間ではないし、 時を止めてしまえばすぐに出来上がるわ」  
さて困った、こうなったら咲夜に任せるほかない。美鈴は悩み、ふとそこで閃いた。
「で、でしたら、私もマフラーを編むので
交換と言うことにしませんか……?」   「交換……?」  
「ええ! せっかくですし」  
「それは……気持ちは嬉しいけれど」  
悩ましげに咲夜は「でも貴方、マフラー編めるの?」と言って、美鈴は「あ」と間抜けな声を上げた。