「美鈴さんお手製マフラーはどうですか?
結構、頑張ったつもりなんですが……」  
咲夜は美鈴が首に巻いてくれたマフラーを触り、なでて「……まあ、70点くらいね」と言った。 冷たい言葉とは裏腹に、その表情はどこか柔らかだ。なので美鈴も自然と笑顔がこぼれる。   「手厳しいですねぇ~」   わざと美鈴は苦笑いして、そして自分の首に巻かれたマフラーに手をやる。 ふかふかしていて、編み目も丁寧でピシッとしている、流石は咲夜お手製としか言いようがない。 このメイド長に苦手分野はあるのだろうかと思いつつ、自作のマフラーを恥ずかしくは思わなかった。
「コツと積み重ねだから。これから努力すれば もっと良いものを作れるようになるわよ」  
「ええ、少し面白さが分かってきたので、
いろいろと練習をしてみますよ。
次は手袋とかですかね」   結果的に咲夜の時間を大きくとってしまった編み物会だが、美鈴にとってなかなか楽しい時間だった。
「帽子がいいわ。簡単だし、 貴方でも作れるでしょう」  
「咲夜さんに作りますよ」
「…………」  
「まだまだ基本が出来てませんし、
また教えていただけませんか? へへへ」
「それなら、手袋が良いわ。 冬の貴方の手、いつも真っ赤で、大変そうだから」  
「えっ、また私に編んでくれるんですか?」  
「貴方が編むときの参考用です。 手袋は難しいから、私のを見ながら編めばいいわ」  
また交換ですね、そう美鈴が言うと咲夜は、次はもっと丁寧に編みなさいね、と流した。 しかし、その咲夜の頬と耳は寒さ以外で照れているような、そんなうっすらとした赤みをしていた。
「今度のお茶菓子は私が用意してあげるわ」  
「お茶会ではないんですが……
楽しみにしています」  
美鈴は首のマフラーの暖かさを感じながら、さてどんな手袋を次は編もうかと考え始めた。 私のサイズの手袋を参考にしたら、咲夜さんの手じゃちょっと大きくなっちゃうだろうな。 とはいえ余りかわいらしい手袋だと嫌がるかも。でも、きっと似合うだろうと、そう思うのだ。