半妖でありながら人里で子どもたちのために寺子屋を開いている妖怪、
上白沢慧音は悩んでいた。
「まさか、私の授業がつまらないと
子どもたちから思われていただなんて……」
慧音の授業は入念な下調べと教養、そして教育への熱意によりとても完成度の高いものとなっている。
しかし、完成度の高い授業が子どもたちに受け入れられるというものでもなく、
真面目で厳格、そして面白みのない彼女の授業は難解過ぎて退屈だともっぱらの評判だった。
「このままではせっかくの授業時間が台無しだ。
子どもたちに面白いと言ってもらえる授業を
何か考えないと……小粋な冗談でも挟んでみるか?
いや、冗談は得意ではないしな……」
机に向かって唸りながら、慧音は紙に様々なアイディアを書き連ねていく。
「一般教養だけでなく、子どもたちの興味を
引きそうなものも扱うようにしたらどうだろうか?
しかし、何が興味を引くんだ? 都市伝説や雑学…
それはもはや授業とは言えないのでは?」
うーん、うーんと唸りつつ頭を抱えつつ、慧音は紙にもう一度視線をやる。
「私の硬い頭では、子どもたちの興味をそそる
明快な授業は思いつかないのかも知れない……。
いや、待てよ? 私よりももっと、子どもたちに
近い者たちに案を募るのはどうだろうか?
そういえば、外の世界で勉学に励んだ者も
幻想郷にはたくさんやってきていたな……!」
「生徒っぽい人たち」が寺子屋に集められ、様々な妄想を繰り広げることになるのは、また別のお話。