子どもたちが退屈に思わない授業とはどういうものなのか。
意見を求めた慧音によって集められたアドバイザーたちの中で一人、
鈴仙・優曇華院・イナバはかつて所属していた軍を元に、
自分が求める教官像を思い浮かべていた。
「訓練生と言えば、厳しくも険しい訓練の日々を
過ごすもの。当然、心身ともに疲弊しているわ。
仲間内での争いだって耐えないでしょう。
そんな時、信頼できる教官がいたら
楽しいかもしれないわ」
想像するは教え子の一人が乱闘騒ぎを起こした際の出来事。ここでは仮に東風谷早苗としておこう。
「よし、訓練終了! 解散!
……早苗!貴様はここに残れ!
貴様に話したいことがある!」
「チッ……。なんですか、鈴仙教官殿。
別に訓練に手を抜いたりした覚えはないのですが」
「貴様、また外出中に乱闘騒ぎを起こしたな。
報告が来ているぞ。どうして喧嘩なんかしたんだ。
忘れたのか? これ以上問題を起こしたら、
退学になると言われていただろう!」
「別に。ただムカついただけですよ。
退学でも何でも、好きにしたらいいじゃない」
ぶっきらぼうに言い放つ訓練生。しかし、鈴仙は溜め息の後、慈愛に満ちた笑みを浮かべる。
「……まったく、不器用なやつだな。
本当は、仲間を助けるために戦ったんだろう?
もし仲間が絡まれていたとしたら、
貴様はきっと、助けに入るだろうからな」
訓練生ひとりひとりのことをしっかりと見て、そしてその考えに全力で寄り添う。
それこそが、鈴仙が考える教官の姿。決して厳しいだけじゃない。優しさもまた必要なのだ。
「退学処分は取り消しだ。貴様にはこれから
私との特別訓練を受けてもらおう!
さっそく夕日に向かって走り出すぞ!
遅れたら置いておくからな!
さぁ、私についてこい!」