寒い雪の日が続く、こんな神社に訪れるのは相変わらずセーラー服の巫女だけだ。
寒さが良かったのか、長い長い一方的なお喋りが良かったのか、とにかくその瞬間は突然訪れた。
「それでですね、いつかそのスイーツを
私も食べてみたいって――」
「――私も食べたいねえ」
諏訪子の相槌に巫女は驚き肩を跳ねさせた。
動転し、誰かを探すために慌てて境内を見渡し始める。
「ひょ、ひょっとして……
あなた様は……か、かみさまですか……?」
信じられないと口を開け、こちらをマジマジと眺めている。そっと手が頭に伸ばされたので叩く。
「こら、神様の頭を撫でようなんて失礼な子だね」
「あ、え、あっ! 失礼しましたぁ!」
ははーっと、土下座し始めたセーラー服の巫女に対して諏訪子は少々以上のおかしみを感じた。
「諏訪の神は祟り神。ミシャグジの畏れを
忘れた当代の巫女に、罰を与えにきたのよ」
「え、ええ~!す、すみません! ごめんなさい!
そんなつもりはなかったんです~!」
諏訪子がちょっと脅かすと、少女はあわあわと涙目になりながら地の雪に額をこすりつけ始めた。
「おやおや、諏訪子よ。
余り我らの巫女をいじめるでないよ」
「こ、この声は……っ!?」
出番を待っていたかのように、奥から力を蓄えていた相棒……神奈子が現れ、早苗に味方する。
「でもね、失礼なんだよ、この子は」
「毎日我々に話しかけてきた健気な子じゃないか」
少女は新たに現れた救いの神に対して目をキラキラと輝かせていた。そう、これが諏訪の信仰である。
私が畏れを、神奈子が救いを、それぞれが表と裏を担当し、人の信仰を両面から集めていく。
「守矢神社の巫女として、まずそこから
知ってもらわなきゃだね」
信仰が遠ざかり滅びつつあった神社にまた、信仰が灯り始めていた。