今日も昨日と変わらない。きっと明日も変わらない。彼女にとって、日常は同じことの繰り返しだ。
「……………………退屈。
どうしてこんなに毎日退屈なんだろ」
学校の二階、授業中の教室。窓際の席で、菫子は窓の外をぼーっと眺める。
彼女にとって、授業の内容は簡単すぎてどうでもよかった。
天才であるが故に、菫子は人並みの生活に飽きていた。彼女にとって、この世界は平和過ぎた。
「雪、すっごい積もってる……今すぐあそこに
飛び込んだら、少しぐらい楽しいのかな」
授業中だけど、呟きを洩らしてみる。天才故の奇行と思われたのか、誰にも注意されなかった。
誰にも届かなかったのかも知れない。溜息が止まらない。脳も身体も、退屈だと叫びを上げている。
このまま惰性で生きて、何の変哲もない日常を過ごして、そして普通に死ぬのだろうか。
そんなの、天才に生まれた意味がない。神様が与えてくれた特別を、完全に持て余しているだけだ。
ああ、誰でもいい。どんなきっかけでもいい。この退屈を、何とかしてくれ――。
そんなことを考えながら窓の外を眺め続けていると、一瞬、その先の景色が変化した。
今まで一度も見たことが無い、古めかしい日本のような景色。そして、菫子の目に菫子が映った。
その景色の中にいたのは紛れもなく、宇佐見菫子自身だった。
「今のは……錯覚? でも、
それにしてはハッキリしすぎじゃ……?」
ふと思う。もしかしたらこことは違う別の世界が存在していて、
その世界の自分が、一瞬だけ私を見に来たんじゃないか――と。
「バカな話ね。……でも、もしその世界に
行けるなら、こんな退屈とはおさらばできるかも」
突然現れた非現実を目の前にして、菫子は久しぶりに高揚感を覚えていた。