宇宙空間のような場所に、無数に浮かぶ様々な種類の扉。和風に洋風、その数と種類に限りはない。 現実離れした、ある意味神秘すら感じるそこは、 摩多羅隠岐奈が管理する、「後戸うしろどの国」と呼ばれる世界。 隠岐奈の能力で用意された扉を使って様々な場所へ移動することができる、特別な空間である。 そんな亜空間の中心にある巨大な椅子に座りながら、隠岐奈は珍しい来客を歓迎する。 　 「よくぞここまで来たな。どうやって

左右に便利な傀儡を二人従えたまま、隠岐奈はニィィと口角を上げる。 幻想郷を創り出した賢者の一人に相応しい圧倒的な威圧感に、客は思わず身震いする。 　 「ああ、すまない。怖がらせるつもりはなかった。

不要だからと、他人への気遣いというものを

神が誰かを敬うことなど決して有り得てはならない。 故に、彼女は自分以外の全てを見下し、そして可能な限り庇護下に置こうと画策する。 　 「前置きが長くなってしまったな。舞と里乃以外の

悪い癖だ。お前も緊張で倒れてしまいそうだし、

隠岐奈は椅子に頬杖をつき、悪役のような笑みを張り付けると、高らかに言い放った。 　 「この私に従うのなら、

どうだ？　悪くない提案だと思うが」