まるで物語に出てくる魔王のような台詞に、彼女の傀儡たちはひそひそと言葉を交わし始める。
「隠岐奈様、別に世界を支配していなくない?
ただ世界中飛び回れるだけだよね」
「普段はココに引きこもって扉の向こうを
眺めてるだけじゃんね。何で偉そうなんだろう?」
「……少しは空気を読んでくれないか、お前たち。
今は格好つける場面なのだから」
舞と里乃から指摘を受けた隠岐奈は、がくりと肩を滑らせる。
「隠岐奈様は確かに偉いし凄いけど、
架空の手柄を振りかざすなんておかしいんだもの」
「せめてどんな世界にもお前を送ってやろうかー、
ぐらいが関の山よね。流石に盛り過ぎじゃん」
「いいんだよ。こういう時は
分かりやすさこそが重視されるのだから。
そもそも、これは相手に偉大さを見せつけるための
行いだ。正しさなど二の次なのさ。
お前たちも覚えておくといい。時には詭弁を
駆使するものなんだ、フィクサーっていうのはね」
「要は格好つけたいだけだよね」
「要は意味ありげなことを言ってるだけじゃんね」
「……まあ、傀儡程度に私の言葉が理解できるとは
思っていない。これは上流の話だからな」
心なしかどこか悲しそうな顔で隠岐奈は溜息を洩らすと、再び来客に向き直る。
「さて、生意気な傀儡のせいで話が逸れて
しまったが、もう一度提案させてもらうとしよう。
この私に従うのなら、
お前を好きな世界に送ってやろう。
どうだ? 悪くない提案だと思うが」
「さっきと違う」
「訂正してる」
二童子からの容赦ない口撃に、隠岐奈の眉間のシワはもう一層深くなった。