「さあて、今回の異変は果たして成功するのか
失敗するのか……目にもの見せてもらおうか」
万物の背中に潜む秘神にして、
後戸うしろどの神やフィクサーなどの大仰な二つ名を自称する摩多羅隠岐奈。
彼女は己が遣つかわせた二童子を扉越しに眺めながら、その美しい顔に妖しい笑みを張り付ける。
「舞に里乃。我が手足にして雑用の
後継者が見つかればいいのだが。
二人も早く人間に戻りたいだろう……最近は今の
状況を楽しんでいるようにも見えなくはないが」
彼女にとって舞と里乃はただの傀儡に過ぎないが、二人のことを口にする際、
表情が少しだけ和らいでいるのを見る限り、意外と好ましく思っているのかもしれない。
「まぁ、後継者など、見つからなければ
そのまま二人にやらせておけばいい。
私の真の目的は、
私という存在を異変に乗じて目立たせ、
皆の記憶に私を刻みつけることなのだから」
彼女の本当の正体は誰も知らない。
何故なら、その正体を見ては、聞いては、語ってはいけない究極の秘神だからだ。
しかし、別に彼女は隠れているわけではない。
時としてはこうして大々的に姿を現し、その大いなる存在を人々に誇示するのである。
「ああ、目的は他にもあったか。管理者のくせして
最近たるんでいる紫に喝を入れてやらないと。
あいつは嫌がるかもしれないが、私の異変で少しは
責任感というものを思い出して欲しいものだ」