――私は摩多羅隠岐奈。後戸うしろどの神であり、障碍の神であり、能楽の神であり……。   「そんなの、知ったことか!」   魔理沙は意気を吐いて、気合いを入れ直した。 四季の異変の真犯人を追い詰めたと思えば、あえなく一度敗れてしまったこと、それは問題ない。   「見てろよ、上から目線で
あれこれしゃべってきやがって……」
神というやつは誰もが傲岸不遜ごうがんふそんだ。たかだが普通の魔法使い、どうとでもなると見下しきっている。 魔理沙は勝負で負けたというよりも、相手にされていなかったということに腹を立てていた。 最後の勝負、相手が逃げたと最初は思った。しかし違和感があった、あれはなんだったのか。   「相手が逃げたと思ったけど、 気がついたら自分の……
背中の扉から逃げていた?」  
背中に四季の扉がある限り、私の制御下から逃れる術は無いとあの神は言っていた。 そう、誰もの背中にあの神の勝手につけた扉があり、それを使えば魔力でも装備でも融通できる。
「だからあいつは動かずに全部を持っていて、
誰であろうがそいつの扉から追放できる」  
とんでもなく面倒くさい能力だ、幻想郷の賢者という肩書きはまったくもって伊達じゃない。 しかし、魔理沙は自分の頬がつり上がり、気分が高揚してきているのを感じた。   「ははは、面白いな。悪いけど、
相手が自分より強いのはよくあることなんだぜ」
未知の能力、強大な力、生まれついての種族、努力で埋まらない才能の差……。 それを超えたところに魔法の、自分の信じる力はあって、いつだって乗り越えてきた。 扉をなんとかしないといけない、扉を無くすことは出来ないが……無効化できるなにか。   「ちょっと考えれば簡単なことだな。
さあて、再戦といこうか」