「地上の人間を観察してみなさい、ってご主人様に
言われたから人里くんだりまで来てみたけど、
なんだかみんな忙しそうだなあ。
やっぱり年の瀬も近いからかなあ?」  
雪の降りしきる人里は、人で賑わう茶屋の一角。 雪の積もった傘の下、クラウンピースは椅子の上で 足をぶらぶらさせながら、周囲を眺めていた。
「こんな状況の人間を観察したところで、あたいの
知見に何か影響があるとは思えないけど……。
そういえば、どうして年の瀬の人間は
こんなに忙しそうなんだろう?」  
団子に舌鼓を打ちつつ、クラウンピースは首を傾げる。その姿は無邪気な童子にしか見えない。 寿命の短い人間は、限られた時間の中で様々な事柄を少しでも多く成し遂げようとする。 特に年の瀬は多方への挨拶や新年に向けての準備など、特に東奔西走する繁忙期なのである。
「歩いている人間が『地獄のように忙しい』って
言ってたなあ。
忙しすぎて地獄になるなら、
地獄出身のあたいとしては大歓迎だぜ」
故郷を懐かしむ地獄の住人としての心境か、はたまた悪戯好きな妖精としての本能か。 いずれにせよ、クラウンピースは誰よりも地上という世界を大いに楽しんでいる。   「ご主人様はあたいに楽しんでもらうために
地上の人間を観察するようにって言ったのかな?
……ま、直接聞いてみないと分からないか。
あ、おばちゃん、団子おかわりー!」