雪をも溶かしかねない大きな熱気。板が黒い玉を弾く甲高い音が、博麗神社の境内に響き渡る。 激しいラリーを繰り広げる霊夢と魔理沙。その真剣さは、弾幕ごっこのそれに届こうとしていた。  
「これでどうだ! マスタースパーク ……っぽい打ち方!!」  
「まだまだー! 夢想封印……っぽい返し方!!」
空振りばかりの先ほどまでとは違い、霊夢は必死に玉を打ち返す。 このままでは顔を墨だらけにされてしまう……応酬の中で魔理沙が焦りを覚えた、まさにその時。 魔理沙が放つ鋭いスマッシュを、霊夢はそれはもう華麗に……素早く避けた。避けてしまった。 盛り上がりが嘘のように静まり返り、黒い玉が地面に落ちた音だけが虚しく響く。   「あ……あぁ……やっちゃったぁー!!」  
「こいつは盛大にやらかしたな、 霊夢……あとちょっとだったのに、残念だぜ」
その場に膝から崩れ落ちる霊夢を見て、魔理沙は笑いを堪えながら筆先にたっぷりと墨をつける。  
「なぁ、霊夢。 あと何度、お前の顔にラクガキをすれば 私は敗北を知ることができるんだ?」
「いつまでもされるがままの私じゃないわ。
こんな筆ぐらい、簡単に避けてあげる!」   「避けたら意味ないだろ! こら、逃げるなー!」  
能力を駆使して逃げようとする霊夢に、魔理沙は弾幕の雨をお見舞いする。 怒り顔の裏で、こっちの方が自分たちには性に合っている、と思いながら――。