「さすがはナズーリンです!
よくぞやってくれました!」   「ほら、言ったとおりだろ? お昼前には見つけてきたんだから、 少しは私を見直したかい?」  
約束通り宝塔を持ち帰ってきたナズーリンに感激する星。 それを見た彼女は「当然だ」とでも言いたげに胸を反らしてみせる。 実際ナズーリンは良い仕事をしたのだから、誰も文句はないだろう。
「これだけの仕事をしてくれたのですから、
何か褒美を渡さなければなりませんね。
何がいいですか? なんでもおっしゃって下さい。
毘沙門天の化身として出来る限りのことはします」   「別にいいって。私にとっては大したことじゃ ないんだから。気にしないでくれ」
「いえ、それでは私の気が済みませんよ。
そうですね……では、頭を出して下さい」   「え? 頭って……こう? って! ちょっと何するのさ、ご主人様!」  
星に頭をなでられ、その場から逃れようとするナズーリン。しかし星の嬉しそうな表情を見ていると 少しぐらいは付き合ってやってもいいかもしれない……なんてことを思ってしまう。
「よしよし……ナズーリンの頭は柔らかいですね。
髪もふさふさで触り心地がいいです」   「私をハムスターか何かだと思ってるのかい!? やめてくれよ! 愛玩動物じゃないから!」  
星の態度に狼狽えるナズーリン。彼女にとって、愛玩動物として人に可愛がられるのは ネズミとしてのプライドが許せないらしい。かといって主人の機嫌を損ねるわけにも……。
「逃げてはいけませんよ、ナズーリン。
これは毘沙門天の化身としての命令ですから」   「うぅ……変な気持ちになるじゃないか……。 後5分! 後5分だけだからね!」  
さて、いつになったらご主人様は飽きてくれるのだろうか。そんなことを思うナズーリンであった。