今日も今日とて自由奔放、神出鬼没なサトリ妖怪の古明地こいし。
第三の眼を閉じてしまっていることも原因の一つか、面白いことに目がない彼女。
「今日はどんな面白いことを見つけられるかなぁ?
今日は昨日と違うもの。
きっと、今まで見たことないぐらい、面白いことを
見つけられる……そうだったらいいなあ」
新しい発見、未知との出会い。経験したことのない騒動に、訪れたことのない場所。
新鮮な何かを求めた彼女は、突然冬景色の中でしゃがみ込む。何かを見つけたようだ。
「んー? なんだろう、これ
……小さくてよく見えないや」
ぐぐーっと目を凝らすものの、彼女の視力ではその全容をとらえきれず。
さてさてどうしたものかと、こいしはこめかみを両手で抑え、頭をぐるぐる回転させる。
「何か使えそうなもの、持ってないかなぁ。
ここに来るまでにいろいろと拾ったんだけど」
無意識に従い行動する彼女は、自分でも気づかぬ内に物を拾っていたりする。
今回も例にもれず、彼女のポケットからはいろんなガラクタが飛び出してきたのだが……。
「あ! これ、すごい!
小さいものが大きく見える。
これなら、よーく観察できるかも」
それは虫眼鏡と呼ばれる観察道具。今の状況に打ってつけの宝物だった。
「さぁ、あなたのことをよく見せて。
隅々まで、あなたのことを私に教えてくださいな」
第三の眼を閉じたことで、彼女は世界を新しい眼で見ることができた。
世界は彼女を認識しなくなったが、彼女はようやく世界を認識できるようになったのだ。
虫眼鏡越しに見えたそれはどのように見えるのか。それは、瞳を閉ざしたサトリ妖怪のみぞ知る。