命蓮寺が西洋風の賭博場、いわゆるカジノへと変貌した。 そんな噂を耳にしたフランドール・スカーレットは 姉やメイドたちの目を盗み、屋敷を飛び出してきた。   「美鈴が言っていたカジノのお寺はここね? お寺らしくない派手さだったから
すぐに見つけられたわ」
未知の世界に目を輝かせ、胸を躍らせていたフランドール……だったのだが。   「あら、また当たったの? これで何十連勝目なのかしら。
スロットって簡単なのね」  
カジノの一角で、フランドールは当たりを引き続けていた。さも当然であるかのように。 ただ手を動かすだけで当たりの方から勝手にやってくる。 想像もしないスリル、血沸き肉躍る緊迫感を望んでいた彼女にとって、 決められた勝利はまさに退屈そのもの。気づけば、目の輝きも胸の躍動も消え去っていた。
「はぁ、また当たっちゃった。
カジノって思っていたよりもつまらないのね。
こんなの、何が面白いんだか。もっと
崖っぷちに立たされるような刺激が欲しいわ」  
好奇心でスロットマシンの「ツボ」を少し「キュッ」としてみたのが原因かもしれない。 それはそれとして、勝ち続けてしまうのもつまらないものだなと幼い吸血鬼は理解した。
「すっっっっごく退屈。
こんなにつまらない場所、破壊しちゃおうかしら」  
駆け引きも熱さも感じられず飽き始めているフランドールは、大きなため息を吐いた。