「ご主人様め……宝塔をなくすのは
これで何度目なんだ、まったく……」  
鉤型かぎがたの形をしたダウジングロッドを両手で構えながら、ナズーリンは周囲をきょろきょろ見て回る。 姿だけならただのネズミの妖怪にしか見えないが、彼女の正体は毘沙門天の直属の部下。 そして同時に、彼女のご主人様である寅丸星のお目付け役でもあったりする。
「人里で落としたとご主人様は言っていたが、
全然反応がないじゃないか。
これはまたいつもみたいに無縁塚に
行くべきなのだろうか……
こんなの監視役の仕事じゃないぞ。
私を便利な使い魔とでも思ってるんじゃ
ないだろうな、ご主人様は……」
彼女は毘沙門天から遣わされ星の監視役となった。当然、主従関係はナズーリンより星の方が上だ。 しかし、毘沙門天というあまりに強大な後ろ盾があるせいか、時にナズーリンの態度はぞんざいだ。   「宝塔を見つけたらもう絶対に二度と
失くしたりしませんと宣言させてやろう。
ついでにお灸も据えることも忘れないぞ。
ご主人様にはそれぐらいの罰が必要なんだ」  
ごめんなさい、と涙目で申し訳なさそうに頭を下げるご主人様の姿を妄想するナズーリン。 ちょっとした悪戯心だったが、少しは気が晴れたようで、彼女はダウジングロッドを持ち直す。
「さぁて、ご主人様に説教するためにも
早く宝塔を見つけないとな。
幻想郷がどれだけ広かろうが、このナズーリンに
探せないものなどないと証明してやる」