聖白蓮と豊聡耳神子。
ともに人を超えた存在である二人は共通点も多く、因縁に事欠かない。
信仰を奪い合う商売敵として、彼女たちの身内が対抗意識を燃やすのも必然か。
「豊聡耳神子。あなたは絶大な力を持ちながら、
その力を私欲に用います。どうしてなのですか!」
「聖白蓮。君は我々を邪教呼ばわりしてきますね。
一度格の違いを見せつけてやれば黙るかな?」
言葉をぶつけ、殺気をぶつけ、そして宗教観をぶつけ合う。
宗教上の宿敵、俗的な言い方をするならば商売敵。まさに水と油な二人は、決して相容れない。
「しかし」
「しかし」
……と、誰もが思っていたのだが、賢い彼女たちは人々の予想を容易に覆す行動をとる。
「教えは違えど積み重ねた研鑽は評価に値する。
行く道が交われば手を組むこともあるだろう」
「聖徳王の名は伊達ではありません。手を結べば、
これほど心強い者がいないのも確かです」
「決着をつけるのは、
またの機会とさせていただこう。
今はまだ、その時ではない」
「この幻想郷では人に害成す意志もなし。
不安もありますが、
しばし様子を見るとしましょう」
教えを授ける者として、あるいは古い時代を生きた者同士、相通じるものでもあるのだろうか。
ただし――と、ふたりの超人は、やはり異口同音に言葉を続ける。
「本気で戦えば、勝つのは私ですが」
「しょせん、この程度の魔法使いなど
我らの敵ではないがな」
……やはり似た者同士か。今しばらく、幻想郷の宗教戦争は緩やかに続きそうだ。