「さーって、今日はどんな悪戯をしてやろうか」
命蓮寺にこっそり忍び込みながら、正体不明の妖怪・封獣ぬえは悪だくみをする。
彼女は暇になると命蓮寺に顔を出すが、修行僧になりたいというほど敬虔なつもりは微塵もない。
それでもこの寺に執着する理由は、ぬえが心焦がす相手が、此処にいるからだ。
「大仏に落書きでもしたら聖のやつ、
どんな風に驚いてくれるかな?
それとも聖の大事な数珠をバラバラに引き裂いて
やろうか。うーん、それはやりすぎかなぁ?」
いろんな悪戯を思いついては、ああでもないこうでもないと考えを巡らせる。
しかし、考えることに夢中になりすぎて、彼女の目論見は命蓮寺の主にあっさり見つかってしまう。
「う、うぅ……ごめんなさい……もうしません……
くそっ、なんで私がこんな目に……!」
ぬえは聖白蓮監視のもと、強制的に座禅を組まされてしまっていた。
歪んだ顔には、一筋の涙が。
「あ、足が……くそぅ、聖めぇ……次こそは絶対に
悪戯を成功させてやるからなぁ……!」
長々と説教を垂れられ、さらには苦手な座禅まで強制されているというのに反省の色なし。
それどころか悪戯を諦めない姿勢すら見せる始末。
これには、彼女をやや後方から眺めていた村紗水蜜も八の字眉毛で苦笑するしかなかった。