青空に白雲。快晴、気持ちの良い風が吹くシロツメクサの咲く花畑に三人の少女がいた。
「紫様、藍様。きらきらぽかぽかした日のお外は
お日様の香りがして気持ちいいですね!」
ぱたりと狐耳を傾けたのは橙の主の一人、黄金色の立派な九本の尻尾をした妖狐の藍であった。
「橙。それは違うぞ。
太陽から香りがすることはない」
「……ええ、じゃあどこからするんでしょう?」
二人のやり取りを見て、スキマ妖怪はころころと笑う。
「橙はなにも間違ってなんかいないわ。
お日様の光はね、特別な香りがするものなのよ」
紫と藍がそれぞれ違う意見を言ったため、化け猫の少女は困ってしまい、二人の顔を伺った。
「……いや、その。それは間違いであって、
実際は太陽によって温められた物が――」
「頭が固いわよぉ、藍。
それも含めて、お日様の香りということなのよ」
扇子で口元を隠しながら屁理屈を言ってくる主に、藍は困ったように首をかしげる。
「難しく考える必要はないわ。天気のいい日は
お日様の香りがする。それでいいじゃない」
答えをはぐらかせた紫は野原にえいと寝転がる、従者の狐は眉をしかめ、猫は目を輝かせた。
「ほらほら、藍も橙も、遠慮しない遠慮しない。
草花の絨毯、空は快晴、やることはひとつだけよ」
自分も真似していいかと健気に橙は藍に視線で問いかけるが、藍はとんでもないと首を振っていた。
「藍もいじわるはやめて、三人で日向ぼっこよ」
「いじわるなんてしておりません。
……はぁ、服の洗濯はご自分でお願いしますよ」
化け猫・九尾の狐・幻想郷の賢者という、変わった家族はそうして日向ぼっこを楽しみ始めた。