「さとり様め……地上に遊びに行ったペットたちを
探して来いなんて無茶な命令すぎるよぉ」
ご主人様からの命令によって、地上に送り込まれた火焔猫燐。
あてのない旅に辟易へきえきし、ついには文句まで零し始めてしまった頃、彼女はとある場所にたどり着いた。
「ここは……もしかして迷い家マヨヒガかい?
あたい、歩いている間に
いつの間にかこんなところに……」
マヨヒガなんて歩いて行けるんだなぁ、なんて現実逃避をしていると、足にくすぐったい感触が。
思わず下に視線をやると、そこには燐の足に体を擦り付ける猫が一匹。
……いいや、それだけではない。気づけば、彼女の周りには数多の猫が集っていた。
「おやおや、こりゃまた随分と賑やかな
出迎えだね。珍しい客に興味津々なのかな?」
そんなことを言いながら、近くの縁側に腰を下ろし、近くの猫を一匹抱きかかえてみる。
「ふふっ。かわいいなぁ。お腹が丸見えで……
ちょっと油断しすぎなんじゃない?」
柔らかな笑みを零す燐だが、それは決して猫に癒されてのものではない。
同じ猫である彼女にとって、周囲の猫たちは子どものようなもの。
近所の子どもと遊んであげているうちに笑顔になったお姉さん、という表現が適切だろう。
「いいよいいよ。せっかく歓迎してくれたんだし、
お姉さんが遊んであげようじゃないか。
そうして燐は、時間を忘れて猫たちと遊んだ。……自分の目的も、ついでに忘れて。
……あれ? あたいはここに
何しに来たんだっけ?」