静寂に包まれた迷いの竹林。聞こえるのは風に揺れる笹の葉のざわめきくらいのもの。
騒ぎの絶えない幻想郷において、平和なのは結構なことだ。が、それを不服と思う者もいる。
「ふわぁ~……暇だわ。
なにかイタズラのネタでもないかしら」
平穏よりも騒乱を好む因幡てゐからすれば、竹林の静寂はいささか物足りないらしい。
何か面白いことでもないかなぁ、などと考えていると――てゐの脳裏に、天啓のように閃きが浮かぶ。
「いいこと思いついたっ。まずはあの小人を適当な
口実で呼び出して~。後は……クックック!」
小悪党のようにほくそ笑むてゐ。その顔を見れば、ろくでもないことだろうと察しはつく。
てゐの思いつきは本人にとっては名案でも、被害者には災難そのもの。まさに不幸の閃きなのだ。
「まずはあの化け猫を探さないと。私の提案に
乗ってくれるかしら。猫は自由気ままだからねぇ」
うーんうーんと首をひねるが、てゐは「心配しなくていいか」と両手を小気味よく叩く。
「私のおかげで猫たちのリーダーとして
認められたんだから、断るわけがないし」
心配事はこれでなくなった。あとは、楽しい楽しい暇つぶしのための準備をするだけだ。
「ニシシ。さあ、みんなも手伝ってね。
これからすごーく面白いことをするんだから」
イタズラの算段に笑うてゐに、周囲に集まっていた兎たちは諦めたように顔を見合わせる。
上司の悪戯に付き合わされるのも、部下として当然の役割なのだ。