「あー……退屈だ。なーんにもやることがない。
こんなに暇なのはいつぶりだ……?」
「あんまり暇暇言わないでよ。
こっちまで暇になってくるじゃない」
博麗神社の境内にて。死んだような顔つきで、
魔理沙と霊夢は退屈に押しつぶされそうになっていた。
「言わなくたって暇だろ。ずっと空を
見上げてるだけじゃないか。若い身空で悲しいな」
「空を見上げることをしているのよ。だから私は
あんたと違って暇じゃあないわ。一緒にしないで」
賽銭箱前の階段に座り込み、虚空を眺めるふたり。
だがその視線は空も、雲も通り抜けて、見はするものの何も見てはいない。
意識もずっと、凪いでしまった海のようで、話してはいるが何も考えてはいなかった。
「退屈とは人生最大の病である、とは
よく言ったものだな。このままだと病死する」
「でも怠惰は心地よい、に繋がるんでしょう?
じゃあ案外暇なのも悪くないのかもね」
「私は怠惰なんてごめんだ。いつだって刺激を
求めているからな。今を時めく若者なもので」
「怠惰を嗜む老いぼれでどうも悪うございました。
あー……誰でもいいから
参拝しに来てくれないかしら。
今なら快く持て成してあげるのに」
「違いない。妖怪でも人間でも仙人でも
何でもいいから私たちの暇を解消してほしいぜ」
凪ないだ心に風が吹いたような気がして、意識を取り戻す。
しかし次の瞬間には、博麗神社にはめったに来客がないということを思い出し、
再び考えることをやめるのだった。