「やるわよ! 私たちも! お祭りを!」
博麗の巫女の思いつきは、幻想郷の異変と同じだ。いつだって唐突に始まる。
浄化したユメミタマが見せた光景に、楽しそうなお祭りの様子が映っていたのがきっかけらしい。
「それっていったい、どんなお祭りだったんですか
霊夢さん?」
「さあ? けど、なんかいっぱい机があったわね。
みんな買い物をしていたし、たぶん市場か縁日よ」
「またずいぶんと適当だな……ま、霊夢が
行き当たりばったりなのは、いつものことか」
「私は賛成です~。
神社にお祭りはつきものですもんねっ!
狛犬冥利につきます」
苦笑しながらもなんだかんだでつき合いのいい魔理沙に、尻尾を振らんばかりのあうん。
――そうと決まれば話は早い。
妖怪の山の河童たちに、守矢神社の面々。馴染みのメンツを巻き込んで、瞬く間に準備は進む。
華やかに飾りつけられていく境内は、閑古鳥が鳴く普段の様子とは似ても似つかない。
幻想郷の中にあっても、祭という空間は一種の異界なのかもしれない。
「霊夢さ~ん。屋台の設営で
妖怪の皆さんが揉めてます~!」
「いい加減にしなさい、あんたたち!
も~、これじゃ間に合わないじゃない!」
「やれやれ、まだ準備中だってのに。
相変わらず賑やかなこった」
準備もまた、祭の楽しみのうち。ひと時の幻想ならばこそ、楽しまなければ損だろう。