「はぁ、今日は紫苑もいないし退屈だな。
せっかく私が地上に来てやったというのに……」  
天界の問題児・比那名居天子は空から地上を見下ろしながら、 それはもう大きな溜息を洩らした。 地上で“友人”と呼べる存在ができた天子だが、残念ながら所用とやらで本日は不在。 それならせっかくだし一人で地上を見て回ろうとした矢先、やっぱり退屈だと足を止めたわけである。
「こうなったら天変地異でも起こして
巫女を引っ張り出してやろうかしら。
そして弾幕勝負に付き合わせてあげるの。
退屈しのぎにはもってこいかもしれないわね」  
自分のためなら他者の都合など知ったことではない、とでも言わんばかりの大胆な思いつき。 しかし、残念ながらその思いつきに博麗の巫女が巻き込まれることはなかった。  
「ごきげんよう。今日も地上の見回りですか? たまには天界に戻られたほうがいいのでは」
天子に声をかけたのは、片腕有角の仙人・茨木華扇。 食べ歩きの最中だったので、彼女の腕の中には食べ物の入った袋があった。   「お前は……
確か、霊夢をよく説教している仙人だね」   「否定はしませんが、そういう認識でおられるのは 些か納得できませんね。大体、あれは霊夢が……」  
肩をすくめる華扇。天子はその顔を数秒ほど見つめると、突然その足元に要石を発射した。
「はあっ!? ちょっと! あなた、いきなり何をしているのですか!?」   「よし、決めた。お前には、
私の暇つぶしの相手になってもらおう!」  
華扇が抗議するよりも早く、天子は周囲に要石を出現させる。   「さあ、派手に暴れましょう!
私が満足するまで付き合いなさい!」