「ふんふん、なるほど。これは面白い反応が出た。
この本、パチュリーから借りてきて正解だったな」
深夜、月明かりに照らされる魔理沙の住む小屋。
彼女は分厚い魔道書と首っ引きで、手に持ったフラスコの反応をつぶさに観察していた。
人間でありながら、妖怪さえ圧倒する彼女の魔法は、こうした日々の努力で身につけたものだ。
「次はこいつを試してみるか。そうだな、
ちょっと私なりにアレンジを加えてみて……」
魔理沙は手慣れた様子で、机の上に広げた大きな本にさらさらとスケッチしていく。
その所作は普段のガサツにも見える態度からは想像も出来ないほど、丁寧で美しい。
「この魔法が出来たら、
最初は誰に見せてやろうか。 アリスに見せるか?
いや、やっぱりパチュリーのほうが面白いか?」
フンフン、と鼻歌を歌うようにペンを進める彼女の脳裏には、ふたりの親友の顔が思い浮かぶ。
一癖も二癖もある魔法使いたちだが、魔理沙と同じく魔法に対する情熱は誰にも負けない。
「見せたらびっくりするだろうな。
私にしてはちょっと珍しいタイプの魔法だし。
今から楽しみだな」
そんな親友たちに負けないぐらい、魔理沙も並々ならぬ熱意で魔法に向き合っている。
彼女にとって魔法は人生そのもの。より深く探求するために、こうして寝食も惜しまず没頭していた。
一体何が彼女をそうさせるのかは誰にも分からない。生まれついての性分なのだろう。
ただの人間でありながら、その身に宿す精神は正しく魔法使いそのものだ。
「さて、と……明日が楽しみだぜ。
見てろよ、アリス、パチュリー。
こういう魔法もアリなんだぜ?」