仙人といっても千差万別だ。 死の訪れを恐怖する者、人々を教え導く者、高みへ至るため修行する者。 そんな中、明確に人間の味方をすると主張するのが、号は茨華仙、名を茨木華扇という仙人だ。   「天道を往くことこそが、
仙人としての私の信念です。
そしてそれは邪道とは大きく外れます。
……ですが、決して妖怪を
敵視しているわけではありません。
少しだけ人間贔屓なだけですよ」  
実際問題、彼女は妖怪のために行動することも多々ある。 人間の味方と言いながら妖怪に情を寄せるその姿が、仙人らしくないと指摘されることもしばしばだ。 しかし、彼女はどんな状況においても自分の在り方を決して曲げることはない。 真の姿を誰にも明かしていなくとも、彼女はその信念を恥じることなく見せつける。
「そもそも、妖怪の味方をしても
美味しいものは食べられないじゃないですか。
その点、人間はたくさん美味しいものを作れます。
味方をする理由など、それだけで十分です」  
そう言って、華扇は悪戯っぽく笑った。 仙人は飲食を必要としないのだが、彼女はなぜか食への探求心を持ち合わせている。 自分が人間と近しい存在であると周囲に知らしめるためなのか、 はたまた、ただ食べることが好きなだけなのか。その真意は彼女以外には分からない。 そもそも彼女は、自分について多くは語らない。 分かっているのは、彼女が人間のことを大切に想っているということだけだ。