ひらり、と舞い降りてきた梅の花びらが、酒杯に映った逆さまの満月に浮かぶ。
酒杯の湖面に浮かぶ小舟に笑みを浮かべ、萃香は旧友に問う。
「で、地底ではどんな感じなの?
あんたのことだから、
お節介焼いてるんじゃないの?」
「お節介とはご挨拶だね。けどまあ、
そうだね……いろんな妖怪とダチになったよ。
別れた数よりも多いくらいに、ね。
そうそう、この間なんかね――」
鬼の宴に、湿っぽい話は似合わない。
弔いの酒を飲み干したふたりの鬼は、互いの『今』を語り始める。
「でな、そしたらパルスィのやつが
妬ましいって絡んできてさぁ~」
「ははっ、なかなかおもしろいやつだな。
今度、私にも紹介してくれよ」
月下の酒宴は、月が頂点を遥か通り過ぎても続き、話題はいつしか、それぞれの友人へと移っていた。
「勇儀も会っただろうけど、
人間にもおもしろいやつが多いぞ~。
今度はそいつらとも一緒に飲もうか」
別れを重ねた分、出会いもまたあった。過去はいつだって、未来につながっているものだ。
勇儀と再会したように、過ぎ去った過去とて、未来でまみえることもある。
そう思えば、ひと時の別れを悲嘆することはないはずだ。
なにより、自分たちもまた、いずれは忘れられ、消え去る。醒めれば忘れる、一夜の夢のように。
ならばその夢、楽しまなければ損というものだろう。
この幻想郷自体が、永きを生きてきた鬼にとっては、夢のようなものなのだから。