霊夢と鬼たちの激しい弾幕勝負を見た後、針妙丸は真っ赤な夕日を見つつ物思いにふけっていた。
かつて天邪鬼に騙され、犯した小人族の過ち――。
弱者が見捨てられない楽園を作るため幻想郷に挑んだ、愚かな過去を思い出す。
打ち出の小槌の魔力を使い、多くの妖怪を巻き込んだ。幻想郷に下剋上を突きつけたあの頃。
針妙丸は嘘の歴史、小人族の屈辱。それを与えたのが幻想郷の妖怪たちだと天邪鬼から聞かされた。
「さあ、弱者が見捨てられない楽園を築くのだ!」
嘘を吹き込まれたとは知らずに、針妙丸はそれを信じてしまう。
そして、復讐をするために打ち出の小槌を振るった。それがどんな代償を払うのかを知らずに……。
沈みゆく夕日に、逆さまになった輝針城が蜃気楼のように重なった。
そこには、あの時一緒に異変を起こした、ここには居ないはずの天邪鬼の姿が垣間見えた気がした。
幻が優しく微笑み、ささやく。
「姫。また面白いことをしませんか? 一緒に。
貴方の、貴方のその小槌の力があれば、
私たちが負けるはずありません」
そう言っているように見えた。針妙丸は唇を強く噛み締めて、輝針剣を強く握る。
「……そんな顔で笑う正邪は、もういないよ。
あいつはもっと、ぐちゃぐちゃに笑うんだ」
何かを決意したかのように俯く針妙丸。それを受け、夕暮れに浮かぶ天邪鬼はやれやれと首を振った。
彼女は針妙丸の真剣な表情を見て残念そうな顔をすると、輝針城とともに消えていった。
「私は、これで良かったと思うよ。
いつかあいつが素直になれたら……
一緒に謝ってあげるからねー!」
再び叫んだ針妙丸は、沈みゆく夕日を見つめたまま思いを馳せた。
いつかまた、一緒に幻想郷で面白いことをする日を夢想しながら――。