外の世界から流れ込んできた新たな文化、バレンタインが幻想郷で大流行し始めた。
数多の人々はそのイベントや風潮に乗っかり、それぞれの方法でそれなりに楽しんでいた。
しかし、すべての者が楽しんでいるわけもなく。中にはそれを疎ましく思う者もいた。
「なにがバレンタインよ、なにがチョコよ、なにが
愛を伝える日よ……ああ、妬ましい妬ましい。
いきなり現れた見知らぬ文化のせいで、幻想郷が
愛に満ち始めているのが妬ましい。妬ましいわ」
嫉妬心を操る妖怪・水橋パルスィ。
他人の幸せを妬む嫌われ者は、案の定全力全開で不機嫌だった。
「揃いも揃って幸せそうな顔しちゃって……
気に入らないわ。本当に、気に入らない」
紅魔館の催し物に参加してからというもの、みじめな気持ちでいっぱいだ。
こんな思いをするぐらいなら、いっそのこと、バレンタインなんて壊してしまいたい。
そんなことを考えていたパルスィに、きっかけが舞い降りた。
同じくバレンタインを快く思わない依神女苑と、ユメミタマの登場だ。
「私がチョコレートを盗めば、みんなが
がっかりするはず。そうすればもう妬ましくない。
そうよ、私が華麗なる反逆者、
チョコレート怪盗になってしまえばいいのよ!」
「私の能力とあんたの能力を合わせれば、
バレンタインを台無しにできるはず。
さあ、浮かれた幻想郷に喝を入れるわよ。
チョコレート怪盗団、活動開始!」