「妖怪の山の皆さんに配る分よし、里の皆さんに
配る分もよし。霊夢さんたちの分もよし。
数も包装も問題なし……
あとは配るだけですね! やったー!」
勢いよく飛び上がって大喜びする早苗の傍には、百を優に超える友チョコの山が鎮座していた。
外の世界から幻想郷へと輸入されたバレンタインデー。
もともと外の世界で暮らしていた早苗にとって、とても身近なイベントだ。
「準備は大変でしたが、これもすべては
守矢神社への信仰を集めるため。
チョコレートをなるべく多くの方々に
配って、守矢神社の
地位向上を目指します!」
守矢神社がこの地に転移してからかなり経つが、未だに博麗神社の次、というイメージが強い。
そんな現状を快く思わない早苗が目を付けたのが、今回の愛の祭典なのである。
「霊夢さんには悪いけど、
今回は私たちが勝たせてもらいます。
幻想郷の神社といえば守矢神社。
人里の信仰のすべては我々のもの。そして最後に
おふたりに褒めてもらう……完璧な作戦です!」
早苗がこの幻想郷に来てから縁を結んだ者の数だけ、チョコレートは用意されている。
それはつまり、彼女がそれだけの住人たちから受け入れてもらえたという証拠である。
「さーって、では早速配りに行きましょうか!
すべては守矢神社の輝かしき未来のために!」
きっと、彼女は出迎えられることだろう。多くの笑顔とともに。