蓬莱の薬。口にした者を、老いることも、死ぬことも無い肉体にするという代物。
ある者は『夢の薬』と語り、またある者は『呪いそのもの』と語る。
果たして、永遠の命は幸か不幸か。
かつて千年以上前にその薬を口にした少女、藤原妹紅にとってはどうだろうか?
「そうだな……長く生きてりゃ、
これくらいはできるようになるもんだよ。
どうだ? いいもんだろ?」
長い歴史を生きる中で、火の妖術を身につけた少女。
彼女が扱う美しく眩しい炎。それはまるで、鳳凰ほうおうのよう。
「こうなるまでにはいろいろあったが……。今は、
妖怪退治をしたり、竹林の道案内をしたり……」
そう語りながら笑う妹紅の顔は、とても千年以上生きてきたようには見えない。
「悪くはないんじゃないか? 今こうして適当に
生きているだけでも、まあまあ楽しいから」
少なくとも、彼女にとって永遠の命はそう悪いものでもないらしい。まだまだ気力に満ちている。
「長く生きてれば、悪い時期もあったよ。
でも、もう覚えてないなあ。人生は長いし」
妹紅の扱う炎が、また一段と輝きを増す。まるでこれまで歩んできた歴史を物語るかのように。
「もう千年ぐらい生きてみるのも悪くないかも
しれないな。まだまだやりたいことは残ってるし」
炎に照らされた妹紅の白髪が輝く。これから先も永遠に変わることのない美しさなのだろう。
妹紅の人生に終わりはない。これから先も多くの出来事をその目で見つめながら歴史を作る。
「とりあえず……しばらくは健康マニアの
焼き鳥屋だよ。それで十分さ」
この瞬間もまた、永遠の命の歴史の1ページとして刻まれていくことだろう。