「春ですよー。春がやってきましたよー。
はーるーでーすーよー!」
春になるまで溜めたストレスを発散するかのように、
リリーホワイトは春の訪れを告げる。
穏やかで暖かい、そして華やかな春が来たぞと叫ぶ彼女の声につられるように、
妖精たちは春の空を飛び回る。
幻想郷の春は、いつの年も明るい妖精たちが運んでくるのだ。
「あの」
「はーるーでーすーよー!」
「あの!」
「はる、るー……?」
そんなリリーホワイトに、大妖精とも呼ばれる妖精が声をかけた。
「あ、あの。すみません。
ダメならいいんで……わ!」
言い淀んだ大妖精の頭に、春の花を集めた花冠が乗せられた。
「いいですよー! いっしょにとびましょー!」
「きゃっ……!
は、はい、よろしくお願いします!」
大妖精の手を引いたリリーホワイトは、一点の曇りもない笑顔を浮かべ、
幻想郷の春空へと、勢いよく旅立っていった。