桜が舞い、木漏れ日が差し込む森の中。春告精の声が、木々をすり抜け、心地よく響く。
「もう春が来たのね……たまには、
ソロで演奏するのもいいかもしれないわ……」
そう呟きながら、愛用のヴァイオリンの調弦をするルナサ・プリズムリバー。
妹のリリカ、メルラン、最近は雷鼓とも一緒に、プリズムリバーウィズHとしてステージに立つ彼女。
それだけではなく、同じく楽器を使う九十九姉妹とセッションを行うなどの音楽活動もしている。
(でも、たまにはひとりの時間も大切よね。
もちろん、
みんなといるのも悪くはないのだけれど……)
ヴァイオリンを構え、弦を弾く。自分の奏でる音色だけに、ルナサは意識を沈めていく。
ひとりだが、決して孤独ではない。好きなように楽器を奏でるこの瞬間を、ルナサは愛している。
――数刻が経過しただろうか。気付けばルナサは寝息を立てていた。
可愛らしい寝顔を無防備にさらすルナサ。すると、彼女の周りに森の動物や野鳥たちが集まってきた。
それだけではない。ヴァイオリンが珍しかったのか、木陰から妖精たちも姿を現した。
「メルラン……リリカ……雷鼓、さん……
次の曲はあれでいこう……」
……ふっとルナサは意識を取り戻す。どのくらい寝ていたのだろう。
微睡まどろんでいた間に、妖精は勝手に帽子で遊び、まわりの動物たちはルナサの身体を枕にしていた。
そんな様子を見て、ルナサの顔からは笑みがこぼれる。
たまにはこういう日があってもいいかもしれない。
次のライブのために英気を養う、春の陽気に包まれた――そんな静かな一日が。